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6. CTの検査

7月25日
数日前にドレインチューブははずしてもらっていましたが、脇に穴を開けてから2週間が過ぎ、
相変わらず排出液は出続けていました。
液の色は半透明で少し臭いもあります。
何枚も重ねたガーゼは、一日当てているとぐっしょり濡れてしまうほどです。
この日先生に診てもらい、私は先生に、いつまで排出液は出続けるのかを聞きました。
先生は難しい顔をしながら言いました。
「穴を開けてから2週間、排出液が出続けることは普通はありません。
私も乳腺外科で30年やってきましたが、こんなことは初めてです。
これは・・・本格的に切除などの処置をしないとどうなっているのか分からないです。
どうですか、切除手術しませんか?」
私はもちろん「お願いします!」と答えました。
先生の口ぶりから、この脇のしこりは得体のしれないもので、
今の段階では良性か悪性かは判断出来ないのだと思いましたが、
この時から、自分でも何となく、悪性の可能性があるのだと感じ始めました。

先生はまずCTの検査を受けるようにと、近隣の総合病院の予約を入れてくれました。
CTの画像を撮るには造影剤を注射するので、打ってから48時間は授乳することが出来ません。
私は、今後切除手術の時も考慮し、息子の断乳をすることにしました。
上の子二人が2歳までおっぱいを飲んでいたので、
まだ1歳過ぎたばかりの息子に断乳を決行するのはとても切ない思いでした。

7月29日
CTの検査を受ける前に、病院に寄って診察を受けて、
紹介状を受け取ってから行くようにと言われ、朝早く病院に向かいました。
エコーで脇の下を診た後に、先生が不意に右の乳房の方もエコーで確認しました。
「ん?あれ?ここにも小さいのがあるな。」
右乳房の右端の方、脇よりに、白く映っているものがあります。
先生はそこを何度も見て画像に収めました。

「細胞診をもう一度しますね」
脇の下に3回、そして新たに見つかった乳房の方にも1回、針を刺しました。

「右の胸にも1.4センチほどのしこりがあったので、
こちらからも細胞を取りました。
針を刺した感じだと脇のしこりと似た感触です。大丈夫、おそらく良性ですよ」

そう先生は言ってくれましたが、一向に良くならない脇の下、
そして新たに見つかった右胸のしこりの存在に大きな不安を感じました。
でも、まだ何にも分からない状態で先読みして不安になってもしょうがないと、
敢えて考えないようにしながら、CTの検査を受けに行きました。


8月2日
この日はCTの結果を聞きに病院に向かいました。
名前を呼ばれ処置室に入ると、看護婦さんが、赤ちゃんを見てるから
先に先生の話を聞いて下さいと、部屋に通されました。何となく緊迫した感じを受けました。

先生の前に座ると、CTの画像を見ながら説明を受けました。
「まず脇はこのように大きな腫瘍が認められ、中は空洞になって壊死している状態です。
そして・・・肺ですが・・・転移癌と疑わしい影が認められました。」

え?何?肺に転移癌???

一瞬血の気が引きました。確かに画像には、白い点が数か所、映っています。
私が何も答えられないでいると、先生は続けました。
「ですが、CTをするまえに取った細胞診の結果は、どちらも悪性ではありませんでした。」

は?どういうこと??

「多分、脇の下の腫瘍は、中に膿がたまったために空洞になっていてすかすかで、
細胞を取っても(癌細胞が)出てこないのだと思います。
ですが、CTの結果からどこかに癌がある可能性があります。
このままにはしておけませんので、今日はマンモグラフィーを受けてもらって、
それでも怪しいものが見つからなかった場合は、
先日細胞診した箇所からもう少し太い針で採取して検査をします。」

私は、ある程度の覚悟をしてきたつもりではあったのですが、
まさか肺転移の可能性までは考えてなかったので、
やや放心状態に近い感じで、その後は看護婦さんに促されるまま、
マンモグラフィーの撮影を行いました。
その結果は他に怪しい影は認められなかったので、先日細胞診した場所から、
今度は組織診をしました。バン!という音と少し衝撃を感じましたが、痛みはそれほど感じませんでした。

「検査結果は出来るだけ急いでもらうので・・・今週末の土曜日にいらして下さい」

帰り道、癌でない可能性を考えてみましたが、ここまでくるとそれは少ないと、
自分でも悟りはじめていました。
けれど、今それを認めてパニックになってはいけないという思いもあり、
「癌であるはずがない」と自分に言い聞かせていました。


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5. 最初の診断と処置

7月1日
細胞診の結果を聞きに、予約時間に病院に向かいました。
私の通っている病院は大きな総合病院や大学病院ではなく、乳腺外科専門の個人病院です。
不幸中の幸いなのですが、引っ越しをしてその病院まで徒歩五分の距離となり、
通うのが苦痛ではなくなりました。待ち時間も、大きな病院ほどは待たされません。
それでも、1歳の息子を連れて行くのはやはり疲れます。
しばらく待たされ、息子も飽きてぐずり始めた頃に名前が呼ばれました。

先生は検査結果の紙を私に見せながら説明してくれました。
「検査結果からは悪いものは見つかりませんでした。血液検査もすべて正常の範囲内。
脇がこれだけ腫れていますが、白血球の値も上がっていませんので、
心配するほどでは無いと思います。」

・・・先生の言葉を聞いてほっとしましたが、ではこれは何なの?という疑問が残りました。
「・・・では、副乳がまだ腫れているということですか?中の膿は乳腺炎ですか?」
「・・・そうだと思われます。」
なんとなく、先生に歯切れのなさを感じました。
「・・・痛みはまだありますか?」
「はい、痛いです。」
先生はうーん、と少し考えてから、痛み止めを出すのでとりあえず1週間飲んで、
また来て下さい、と言いました。
授乳しているので、処方された痛み止めはカロナール。
正直、この薬が効くの?と思いましたが、一週間後に予約をとり、処方箋をもらって帰ってきました。

7月8日
一週間カロナールを飲んで、再び病院に来院しました。

「どうですか?痛みは少しは取れましたか?」
「少しは楽になった気がしますが、まだたまに焼けつくように痛いです。」
先生はそこで少し考えてから、また口を開きました。
「まゆささん、やっぱり中の膿を抜きましょう。これを抜かないと、脇の腫れは取れないと思います。
チューブを刺して抜くだけなので、処置は簡単です。」
「はい!お願いします。」
私は内心「やったー!」と思っていました。
このまま痛み止めだけで、脇の痛みや腫れが良くなるとは到底思えなかったからです。
先生は簡単な処置で時間もすぐに終わるからと、三日後に予約を入れてくれました。

7月11日
朝から脇の下の処置をしてもらいました。
局所麻酔をして、脇の腫れの真ん中あたりに穴をあけ、そこにドレインチューブをつけました。
穴を開けたとき、中から何かが出てきたような感覚が少しあったくらいで、
特に痛みは無く、すぐに処置は終わりました。
「中から出てきたものはひどく膿んでいる、というものでは無いですね。
チューブから排出がありますが、段々と少なくなるので、一週間後にチューブは外せると思います。」

その後数日間、ガーゼの取り換えに通院して、一週間後にチューブをはずし、
傷口がふさがって腫れも引き終了・・・
と、この時は先生も私も予想していたのだが・・・
数日たっても中から出てくる排出液はなかなか減らず、痛みも変わらず。
その間に私が予約時間を勘違いして、先生が不在の時間に来院してしまい、
タイミングが合わず、結局チューブをつけたまま2週間ほど過ぎてしまいました。

そしてその間、腰を痛めてしまいました。
突然腰に痛みが走り、お尻や足の先まで痛みが走るほど。思うように歩けません。
座っていたらひどくなり、仕方なしに寝ていたら楽になりました。
ネットで調べたら、坐骨神経痛っぽい症状です。
次女と長男の妊娠中にも軽い坐骨神経痛があったので、それなのかな、と思いました。
でも、歩けないほど痛むのは生まれて初めての経験です。

「やっぱり太りすぎかなぁ?」
結婚前から10キロ近く増えてしまっていたので、主人にそう言ったら力強くうなずかれました。
思わず苦笑い。
(真剣にダイエットしなくちゃ)
・・・・・・

実は、これは癌の骨転移の症状なのでした。
今振り返ってみたら、少し切なくなります。
ただの「太りすぎ」で笑い合えていたのに・・・
そこまで進行していた癌に、今後の診察でようやく気づくことになります。



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4. 乳腺外科受診1日目

6月19日 乳腺外科を受診。
大きく腫れた脇の下をエコーで診てもらいました。
「うーん・・・何だろうなぁ・・・」
先生の顔色が曇ります。
「細胞診しますね。」
先生は看護婦さんにすぐに準備をさせ、3回ほど針を刺しました。
以前した時はちょっと痛みを感じましたが、今回は無痛で、しこりの部分が麻痺していると感じました。

診察が終わり、椅子に座ると、先ほどのエコーの画像を見ながら先生が説明してくれました。

「一年ちょっと前に診た時と、明らかに違っています。以前は3つしこりがあったけど、今は直径6センチほどの大きな塊がひとつ。その真ん中に液体がたまっています。これだけでは何かは分からず、悪いものだと怖いので、細胞診で詳しく調べましょう。」
「・・・真ん中の液体は何ですか?」
「おそらく膿です。血液検査もしますので、採血していってくださいね。」
「・・・膿というのは、乳腺炎の膿がそこにたまったとかですか?」
「いやいや、たぶんそれは無いです。そんなところに通常たまりません」

先生も困惑しているのが分かったので、それ以上質問出来ませんでした。
検査結果が出るのはおよそ10日後。診察日の予約を取って帰ってきました。

予想外に、先生の反応が芳しくありませんでした。
エコーで診て、「ああ、これは○○だね」と言われ、薬を処方されるか、もしく簡単な切除手術を勧められるか・・・そんなふうに軽く考えていたので、私の頭の中は、軽度のパニック状態になっていました。

(先生の反応・・・ちょっと雲行き怪しい感じだったよね。まさか、悪性の可能性があるってこと?)

帰ってから次の診察日までの間、ネットで情報を漁りました。
副乳、脇のしこり、痛み、膿。これらのキーワードで検索しても、出てくるのは乳腺炎や乳腺症など。

(やっぱり悪性の可能性は低いのかな?)
でも、先生の反応が気になって、乳腺に出来る腫瘍を調べました。

乳腺に出来る腫瘍
・線維腺腫(良性の腫瘍)
・葉状腫瘍(良性と悪性が有)
・乳がん(悪性)

この中で症状が似ているのは、急に大きくなるという点で葉状腫瘍だと思いました。
葉状腫瘍は大体が良性であるが、悪性の場合も少なからずあり、その場合は抗がん剤があまり効かないので、切除するしか方法がないと書いてありました。

(でも、そもそも副乳があるからといって、脇にに葉状腫瘍が出来たりするのかな?)
これもネットで調べてみましたが、過去の事例を一件だけ見つけることが出来ました。
皆無ではないですが、ほぼ0に近い確率です。

(やっぱりただの乳腺症かなぁ。まさか乳がんじゃないだろうし・・・)

この時、私はどこかで自分が癌になるはずがないと思い込んでいました。

乳がんになりやすい人には以下のリスクファクター(危険因子)が考えられます。

・初潮が早い(12歳未満)
・年齢が40歳以上
・出産経験がない、あるいは初産が30歳以降
・閉経年齢が55歳以降
・閉経後の肥満
・母や姉妹に乳がんの人がいる
・乳房の病気(乳腺炎など)になったことがある
・子宮体がん、卵巣がんになったことがある
・多量のアルコール摂取
・喫煙

これらのリスクファクターに、私はほとんど当てはまっていません。
長女を出産したのが31歳だったので、これはひっかかりますが、それ以外は該当しないので、大丈夫だろうと思っていました。
それでも、脇の下ある不可解な塊に、検査結果が出るまでは不安な日々を過ごしていました。



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3. ひどくなっていく痛みと腫れ

年明けには転居する物件が決まり、手続きなどが続きました。
4月初めに引っ越しすることに決まりましたが、3月末には主人が長期出張で不在だったため、
一人で乳児の育児をしながらの引っ越し準備で大忙しでした。
4月に入ると、上二人の子供の小学校と幼稚園の進級も重なり、引っ越し後の部屋の片づけと、
目が回るようでした。
その間、脇は腫れてきて、痛みも焼けつくような痛みに変わってきていました。

(さすがにおかしいな。ただの副乳じゃない・・・)

おかしいと思いつつ、新しい環境への対応、忙しい毎日でなかなか病院へ足が向きません。
世の中の主婦の大概がそうであるように、自分の事は後回しになっていました。

6月に入り、長男が1歳の誕生日を迎えました。
この頃ずいぶん機嫌良く遊ぶようになっていました。
そろそろ主人に預けて病院に・・・と思っていましたが、なかなか土曜日もお休みが取れないとのこと。
でも、さすがに脇の痛みがひどかったので、子供をを連れて受診できるか、病院に聞いてみました。
「良いですよ」と快く言ってもらえました。
電話で予約を取り、ちょっと安心。
これで何かがわかり、きっとすぐに改善する。
この時の私はこの程度の予測しかしていませんでした。
まさか自分が乳がん宣告を受けようとは、露とも思っていませんでした。

2. 長男誕生と続く副乳の痛み

平成24年6月 我が家に3番目の赤ちゃんが生まれました。
予定日より17日も早く生まれたのに、大きくて元気な男の子。
上二人が女の子なので、待望の長男です。

我が家は私も主人も関東出身で、今住んでいる九州には親戚など頼れる人がいないので、
家族で協力し合って、みんなで新生児の子育てをしました。

その間にも、副乳の痛みは続いていました。
でも、これはあくまで「副乳」。授乳で胸が張っている間痛むのは仕方のないこと。
ネットで調べると、「最初は大きくなって痛くなるけど、数か月するといつの間にか無くなっている」と書いてあります。

(もうちょっとの辛抱かな?)


産後6か月。
副乳はまだ痛み、むしろひどくなっていました。
しこりも以前より大きくなっています。

(おかしいな、そろそろ痛みも腫れもひいてもいいのに・・・)

母乳の出も少なくなってきたのか、長男の機嫌が良くありません。
副乳も気になったので、まずはおっぱいマッサージに行くことにしました。

マッサージでは、
「おっぱいは出てるよ。赤ちゃんの飲む量に合わせて出るようになってるからね。少量で大丈夫な子なのよ」

(そんなわけないよな。足りていたら、おっぱい1時間も2時間も吸ってるのに放したら泣いて起きることないよ・・・)

「あの、副乳がずっと痛むんですけど・・・」

助産師さんは少し副乳を触ってみて、
「副乳は良くわからないね。痛むこともあるんじゃない?」

はっきり言ってものすごく拍子抜けでした。
何人ものママたちを診てきた助産師さん。
副乳を持った人を診たことは無いの?

この時、右胸のしこりのことは何一つ触れられませんでした。
無かったわけではありません。
確かに、右脇寄りの端のほうで見つけにくい場所ではありますが、見落とされたことになります。
副乳の痛みにはこれをと、里芋の粉をもらいましたが、
当然、それを水に溶いたものを当てていても痛みが治まることはありませんでした。

この時、一抹の不安を拭い去れなかったことを無視せずに、乳腺外科にも足を向けていたら・・・

これが2つ目の後悔です。

しかし、この頃から引っ越し話が浮上し、育児に加え物件探しがあり、
残念ながら日々の喧騒の中に副乳の痛みは埋もれて行きます。
長男は離乳食を進めていくともりもり食べ始め、機嫌も良くなっていきました。



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プロフィール

まゆさ

Author:まゆさ
38歳の夏 三人の子育てに追われる中、
ステージⅣの乳がん宣告を受けました。
落ち込んでいる暇はありません。
乳がんとともに、元気に生きていきます!!
 

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